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利回りだけで判断してはいけない
不動産投資の落とし穴


はじめに

不動産投資を検討するとき、真っ先に目につくのが「利回り」の数字です。広告や説明会の資料では「表面利回り10%!」といったキャッチコピーが大きく打ち出され、初心者にとっては非常に魅力的に映ります。しかし、利回りだけを基準に投資判断をするのは危険です。なぜなら、利回りには複数の種類があり、計算方法や前提条件によって大きく数字が変わるからです。本記事では、利回りを鵜呑みにして失敗してしまう典型的な落とし穴を整理し、正しい判断基準を解説していきます。

利回りには2種類ある

まず知っておきたいのが「表面利回り」と「実質利回り」の違いです。
投資判断をする際には、必ず「実質利回り」を基準にすることが大切です。

落とし穴1:空室リスクを無視している

表面利回りは「常に満室」を前提に計算されていることがほとんどです。しかし実際には、入居者が退去したり、募集に時間がかかったりして空室が発生します。例えば表面利回り8%の物件でも、年間で2か月空室が続けば実質利回りは大幅に低下します。エリアの人口動向や賃貸需要を無視すると、想定通りの収益が得られなくなるのです。

落とし穴2:修繕費用を見落としている

築古物件は価格が安いため利回りが高く見えますが、実際には修繕コストがかさみます。屋根や外壁の補修、給排水管の交換、エレベーターの改修など、大規模修繕が必要になると数百万円単位の出費になることも珍しくありません。これらを利回りの計算に含めないと、購入後に「思ったより儲からない」という事態に陥ります。

落とし穴3:家賃下落を想定していない

新築や築浅の物件は高い家賃が取れますが、築年数の経過とともに相場は下がっていきます。広告の利回りは「現在の家賃」をベースにしているため、将来の下落を反映していません。たとえば築5年で月8万円だった家賃が、築15年では月6万円に下がるケースもあります。長期保有を前提にするなら、将来の家賃下落を織り込んだシミュレーションが欠かせません。

落とし穴4:諸費用や税金を軽視している

不動産購入には、仲介手数料や登記費用、火災保険料などの初期費用がかかります。さらに毎年、固定資産税や都市計画税も発生します。これらを考慮しないと、利回りの計算が現実離れしたものになります。初心者ほど「見えないコスト」に気づかないまま投資を始めてしまいがちです。

正しい投資判断のために

利回りの数字に惑わされず、以下の観点をチェックしましょう。
こうした現実的な数字で判断することで、リスクを最小化できます。

まとめ

利回りは不動産投資を判断するうえで重要な指標ですが、それだけで結論を出すのは危険です。空室や修繕、家賃下落、税金といった要素を含めて「実質利回り」でシミュレーションすることが成功のカギとなります。数字の魅力に惑わされず、冷静にリスクを見極めて投資判断を行いましょう。